テクノロジーが拓く飲食店の未来

【フードテックの現状】
 昨今、食に関する様々な取り組みをフードテックという言葉と共に耳にすることが多くなった。
この背景には、食に関わる問題に対してIT技術を活用し、改善、解決する取り組みが増加していることが挙げられる。身近なところでは、飲食業界の人材問題、顧客の外食離れ、食材品質の不安などがある。この問題を乗り切るために、IoT・AIなどのIT技術が活用され、農業の効率化、流通から販売までの仕組の見直しが増えている。こういったIT技術と食に関わる産業を組み合わせた取り組みやイノベーションをフードテックという言葉で表されている。
フードテックの始まりは、アメリカのハイテク産業が主導で進めるものと、ヨーロッパの社会問題を背景に課題を解決する2通りがあると言われている。
この背景には、2050年には地球上の全人口の消費カロリーを満たすには、食糧の生産量を70%増やす必要がある。とFAO(国際連合食糧農業機関)が発表*1 していることと、これに加えて、現状のまま肉や魚の大量消費を続けると、動物性たんぱく質不足や、大量消費から発生する廃棄食材を原因とした環境汚染が予測されていることが挙げられる。日本でも少しずつ広がりを見せているが、フードテック先進国の様に食文化に浸透するまでに至っていない。

*1:FAO発表 How to Feed the World in 2050 参照

【外食産業に興るフードテック】
 フードテックでは様々なIT技術が農業から流通まで幅広い食の領域で活用され、課題を解決している。
その中で外食産業に焦点を当てると、顧客の外食離れ、人手不足、集客の不安定性、業務精度の不均一などの課題が挙げられる。また、昨今ではアルバイトスタッフの不祥事など人材不足の上に人材育成難といった新しい課題も現れている現状だ。これらの課題に対して、AIやロボティクス、IoT技術を活用し様々な方法で課題解決に試みが行われている。
■調理の自動化
業務の効率化と人材不足解消を目的とした試みで、調理器具(オーブン)にメニューの調理法データを入力し、実行するだけでアルバイト店員でも調理ができるシステムや、2本のロボットアームが料理に合わせて自動で調理を行う大掛かりなシステムなどがある。
■清掃業務の自動化
こちらも人手不足の解消や、業務の均一化を目的とし、家庭でもなじみのあるルンバの様なロボット掃除機や、食器洗いなどを全自動化する取り組みなどがあり、営業時間外にロボットを稼働させ営業時間外の作業時間の削減にも効果を上げている。
■配膳・下膳の自動化
回転ずしのようなレールを使ったものから、ロボットが直接配膳するものまで様々な自動配膳があり、人手不足改善、や空間活用に効果を発揮している。
■顔認証・キャッシュレス化
支払作業や会員証確認作業の軽減を図った試みとして飲食店を問わず導入され始めている。
■遠隔操作や自動のロボット接客店
人件費削減や人手不足の改善、店舗の特徴作りを目的として導入されている。遠隔操作を利用したものでは身体に恵まれない方々の雇用を目的とし社会貢献にもなっている。

【フードテックによる飲食店の未来】
 食と技術の造語であるフードテックは、IT技術の進歩と共発展し、新しい店舗運用の形を創出し、店舗経営と深く結びつき、より需要が見込まれるサービスになると言える。エクスウェアでは未来の飲食店舗の形は、よりスマート且つ、効率的になり、極端な話では、飲食店のクラウド化が起こるのではと考えている。これはシェアカフェなどのサービスが始まっている昨今、調理のデジタル化と調理ロボットにより、料理人は現場に居る必要がなくなり、店舗毎の接客スタッフの需要も低下するのではとした仮設をもとにした考えである。
■空間共同利用の進化
飲食産業における廃業数は景気が回復していると言われる近年でも2017年の段階で高いと言われている。*2 廃業については様々な理由があるが、空間のシェアは店舗を持つリスクが少なく、集客が不得意な企業であっても費用を抑え、結果を出すことができる。この空間をシェアするシステムにIT技術を加えることで、料理を提供する側はどこにいても複数店舗で商品を提供でき、同時に複数作業を行える。これは、地方から都心への出展を容易にすると共に、料理の質を一定に保つことができる。
■ヒューマンリソースの削減
スタッフの人材教育については各大手企業が自教育プログラムを組み時間と費用を割いている話を聞くことがある。この人材教育の時間を、動画を使った教育アプリを使い、アルバイト研修や新人教育に利用している企業も増えてきているが、人材不足や、昨今の非正規雇用スタッフの不祥事など、外的不安要素は大きく変わることはないと言える。この人材不足に対して、ロボットを使った接客や、自動配膳が、海外を含め少しずつ広がりを見せている。現状では課題も多く残るが、企業側が制御できなかった部分を制御できるようになる上、教育に必要な時間も無くなる。この結果、人材教育に当てていたリソースを別作業に当てることができる。
■キャッシュレスへの移行
国を挙げてキャッシュレス推進を行っている。これは飲食店側にもメリットが多いものである。売り上げ集計に当てていた時間が短縮され、社員の拘束時間を軽減することができる。また、集計作業などのヒューマンエラーを無くすこともできる。また、電子決済導入により顧客増加・顧客単価の増加も見込めると言われている。顧客側としては支払いが楽になるメリットもある。
■顧客管理の生体認証化と動向データの統合
近年、生体認証を利用した顧客管理サービスが増加傾向にある。会員カードや会員アプリによる管理以上に不正認識を回避した精度の高い管理が行え、他のシステムと連携させることで顧客の行動データを管理し、分析することができる。この分析データをもとに、顧客の状況に合わせた接客提案が行える。この顧客に寄り添った接客提案により、IT化の弊害である無機質な環境において満足度向上を図ることができる。

最新のIT技術を活用し「食」のイノベーションを目指すフードテック。食文化の中にある外食産業について未来を考えたが、中身は業務システムの省力化であり、リスクを軽減する試みであった。業務システムの省力化は、機械や人工知能が職業を奪うと言われているがあながち間違っているとは言えない。しかし、機械や人工知能は道具に過ぎないことは変わらない部分であり、使う側が何を考えるかで未来は違ったものになる。いずれにしても、これからフードテックが浸透していくことは間違いなさそうだ。

【フードテックサ―ビス一例】
 エクスウェアではフードテックの未来をより現実的なものとするため、接客対応から集客・情報収集まで様々なシーンに活用できるサービスを用意している。その一例は完全な無人ではないが、人手や人材不足問題に対応し、顧客への配慮もされた設計になっている。
■顔認証によるおもてなし
AI(人工知能)を活用した顔認証システムを利用し、お客様の性別、年齢、表情、来店状況、好みなどから、お客様1人1人に合わせたサービスの提供が行え、顧客満足度の向上に貢献している。
■ロボットによる接客支援
AI(人工知能)搭載ロボットを活用することで、接客スタッフとして、座席案内・メニュー紹介などのサービスを任せる事ができ、人手不足解消や人件費削減を実現している。
■電子メニューを用いたオーダーシステム
日本語がわからないお客様に対して商品イメージと説明を英語等で提示できる為、お客様は、商品をイメージし、簡単に注文できるシステムで、海外の方にも満足度の高いサービスを提供できる。
■IoTを活用した自動配膳
人材不足の解消や、人件費の削減などの業務効率化を目的とし、エンターテインメントとしての効果も見込め、空間問題解決と話題性の獲得も実現している。
■アンケートを活用した顧客満足度調査
QRコードを活用し、場所、時間、デバイスを選ばないアンケートが提供でき、アンケート結果はサービス改善の指標として利用でき、顧客満足度の維持および向上を実現する。
■混雑具合の可視化
着席センサーや出入口センサーを活用し、店内状況の把握や、一日の来店状況をデータとして可視化することでダイナミックプライシングや、顧客への待ち時間の提示に活かし、利益の拡大、顧客満足度向上を実現している。
■販促アプリ開発
顧客向け会員アプリケーションを活用し、リピート力向上や、販売促進を実現している。一連のサービスと連携もでき、ユーザー動向の可視化が行え、ユーザー満足度向上に効果を発揮する。

様々な技術を取り組んだFood Techの活用方法

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