エクスウェアは学校法人聖路加国際大学と「ICアシスト for Pepper」の開発に関する相互協力の基本合意書を締結し、人工知能(AI)とロボットの活用により、医療説明の支援を目的とした共同研究を行います。
【共同研究の目的】
本共同研究は、多様化・高度化が進む医療業務に対して、ロボティクス、人工知能(AI)などの情報技術を活用することを目的としており、その第一歩として、2019年度に、聖路加国際病院において医療説明支援の研究に取り組みます。
【現状と課題】
医療説明の基本概念はインフォームド・コンセント(※1)であり、「説明と同意」という訳がよく用いられるように、十分な説明による情報提供が非常に大切です。一方で、受けた医療に「満足していない」と答えた患者が挙げた理由の中で、「医師からの説明」が49%、そして「待ち時間」が43%で1位2位を占める(※2)との調査結果があります。説明時間と待ち時間は背反の関係にあり、患者に丁寧に説明を行って多くの時間を費やすと、結果的に患者の待ち時間が長くなる、というジレンマを医療現場は抱えています。
そこで考えられるのが、この医療説明の一部を医師以外の他業種(看護師、医療事務員)に委ねることです。しかし、医療説明は、内容がある程度決まっている場合であっても医師ごとに話し方が異なるため客観的な分析が困難であり、また患者の反応や理解度を見ながら調整していることから、他業種へ委ねることは難しいのが現状です。
※1 インフォームド・コンセント(Informed Consent)とは、十分な情報の提供に基づいた合意を意味する言葉で、患者やその家族が医療行為や治療の内容について必要かつ十分な説明を受け、十分理解した上で、患者自らの自由な意志で合意することを指す。ICと略されることも多く、本研究の開発案件もPepperを用いてICを支援するという意味で「IC アシスト for Pepper」としている。
※2 第6回日本の医療に関する意識調査 日医総研ワーキングペーパーNo.382図76(2017年7月)
【課題解決の方向性】
本研究では、ヒト型ロボットの利用により説明内容の標準化と再現性を実現した上で、その説明に対する患者の反応や理解度を数値化する仕組みを構築します。この方法により、説明から理解・同意に至るプロセスを客観的に評価することが可能となります。また、標準的な内容に関しては均質な説明があらかじめ提供され、医師は、個々の患者の状況に応じた内容の説明や、反応・理解度に応じた説明に集中することが出来るようになります。説明の質の向上と共に時間の有効活用が可能となり、上記課題の解決が期待されます。
【ロボットと人工知能( AI)による医療説明の支援】
ヒト型ロボットを活用することにより、従来用いられてきた紙の説明文書やタブレット・ビデオ等よりも双方向性が向上し、患者の反応をより多く引き出すことが可能となります。ロボットを通じて取得した様々な情報を、人工知能(AI)・機械学習・画像解析などの手法により分析することで、患者の反応や理解度を数値化します。分析結果は医師にフィードバックされるのが基本ですが、研究の今後の段階としては、ロボットを用いた説明自体にもこのフィードバックを活用することが検討されています。
【共同研究の経緯】
本共同研究は、ソフトバンクロボティクス社主催のPepper活用アイディアコンテスト「Pepper Owners Challenge 2018」がきっかけとなりました。聖路加国際病院が医療現場で抱える問題の解決を想い描き、Pepperの活用方法をエクスウェアが具体化した「ICアシスト for Pepper」は、同コンテストで最優秀賞を受賞しました。
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